二四〇九階の彼女

二四〇九階の彼女 西村悠 電撃文庫 2006年10月25日

二四〇九階の彼女 (電撃文庫)

二四〇九階の彼女 (電撃文庫)

☆☆☆☆☆ 
 そこは、一度滅びを向かえた世界。人々は無数の階層から成る『塔』の中で生活していた。各階層では神の代行機械であるアントロポシュカがその階層世界を管理していた。人々が幸せに暮らすための世界を作る――その目的のためにアントロポシュカは動く。しかし、時の流れはやがてそれらを狂わしていく――。
 そんな幸せに狂った世界たちを一人の少年が旅をしていた。少年の名前はサドリ。相棒のカエルと共に『塔』の外を目指していた。かつて交わした約束をはたさんがために――。
 う〜ん、これはなんとも判断が難しい。結構好きなタイプの話で、なかなか面白いと思える部分もあるのですが、どうにもノリ切れなかった感じ。
 階層ひとつひとつが1つの世界となっている『塔』を、外に出るために下りていくというお話です。この『塔』の設定や、階層を下りるための条件がなかなか面白いですね。また、サドリたちはそれぞれの階層の姿を目の当たりにしたり、その住人達と交流をしたりするわけですが、自分の目的のためには誰かを利用しなくてはならないって言う感じの雰囲気が結構好きですね。
 ただ。どこか中途半端に感じてしまう部分があったりします。もうすこし違った見せ方が合ったのではないか――そう感じたりも。多分、このあたりが乗り切れなかった原因だと思われます。まあ、あくまで私の中でって事ですが。
 まとめ。『塔』の外に出るためにサドリとカエルが旅をするお話。『塔』を出ることを決めたキッカケになった約束を交わした経緯が印象的でした。個人的には今一乗り切れなかったのですが、そのどこか哀しい雰囲気は結構好みの作品でした。
 印象に残ったところ(以下反転)――「すぐ逃げよう。カエルになるのを断ったら、何をされるかわかったもんじゃない」「カエルになればよいではないか。なってみればその魅力も解しよう」――サドリとカエルの会話。カエルの世界でのことです。カエルだけの世界、なんというかシュールだ。個人的にはその魅力はわかりたくないかも(笑)。