時間商人

時間商人 不老不死売ります 水市恵 ガガガ文庫 2008年8月24日

時間商人 不老不死、売ります (ガガガ文庫 み 1-4)

時間商人 不老不死、売ります (ガガガ文庫 み 1-4)

☆☆☆☆☆
 時間商人。それは都市伝説のようなものだった。だが、時間商人は実在する。彼らは、不老不死を必要とす者たちの前に現われて「10年間の不老不死」を提供する。その対価は2つ。寿命か、金銭のどちらかを選択することができる・・・。これは時間商人と出会い、数奇な運命に導かれた者達の物語。
 「10年間の不老不死」を売り物にする時間商人と契約した人達が綴る物語、『時間商人』です。これはまずまずな面白さでした。どこか淡々とした雰囲気がよかったですね。ただ、イマイチ何を伝えよとしているのかが分かりにくく感じました。
 それはそうと話は短編4つの構成です。それぞれは独立した話なのだけど、実はちょっとした繋がりがあったりしたのが印象的でした。短編なので以下それぞれ簡単に感想を。
 第一話・・・トップクラスのプロ野球選手であるが、タイトルがとれず常に2番手に甘んじ続けた和敏が時間商人を訪れる話。自分の感覚だと「別に2番手でもいいじゃないか」とか思ってしまうので、和敏に共感は出来なかったのですが、それでも今まで努力しつづけた男が「衰え」という現実を前にし 時間商人との契約をどうするか悩む姿は印象深いものがありました。
 第二話・・・病気の為 老化してみえる少年とその友人たちの物語。展開がすこし性急な感じはしましたが、お話自体は割といい話だったかと。
 第三話・・・トップ歌手のアツミの物語。自身の歌い方では歌手としての寿命が短いと悟ったアツミは時間商人と契約しようと決意するが・・・といった感じの話。個人的には今回のなかで一番好きかも。前向きな終わり方が素敵です。
 第四話・・・一話で登場した和敏の引退試合の話。これはなかなか面白かったです。歴戦の名打者と次代のエースの最初で最後の戦いが熱かったです。
 まとめ。「10年だけの不老不死」を提供する時間商人が登場するちょっと変わった作品。全体的に少し地味な感じがするのと、主題がよく分からない部分もあったりしましたが、読みやすくまずまず楽しめた作品でした。続きがあるなら読んでみたいかも。