イリーガル・テクニカ1

イリーガル・テクニカ 1さまよえる賢者 後藤リウ

イリーガル・テクニカ(1)さまよえる賢者 (角川スニーカー文庫)

イリーガル・テクニカ(1)さまよえる賢者 (角川スニーカー文庫)

都市の上空に現れ、全てを焼くつくす光<熾光>シアノライト。その光によって破壊された文明。そしてその数百年後、西方に進出を図る帝国と、その帝国と対立する二人の青年カイタとヴィンデの物語。
 まず最初にこのお話は設定が凄いです。人口が五百(カウント)を超えると、全てを焼き尽くすために降り注ぐ<熾光>を筆頭に、魔法使いの意味合いを帯びるほどの知識を持ち、滅んだとされる文明を扱える賢者(テクニカ)。さらにそんな賢者(テクニカ)達の隠れた都市―ムネーメイオン―そして何より人型戦闘兵器、グラディアートルの存在等、実に興味を覚える設定がいくつもあります。これらの設定が、壮大で重厚な世界観を形作っていると言えるかと。
 ただし、読んでいて幾つか残念に思ったこともあります。まず、これだけ練られた設定と重厚な世界観の中で、妙に緊張感が乏しいという事。緊張感が高まっていくはずの戦闘シーンや重要なシーンでも、やけにノリが軽く感じられました。
 次に主役のカイタとヴィンデについて。どうもこの二人のキャラクターに魅力を感じられないという事。主体性があるようでなかったり、キャラクター性がいまいち掴めなかったのが原因かもしれません。どちらかというとサブキャラたちの方がいい味だしていたかと。
 もっともこれらの点は、今後の展開しだいで大きく変わっていくことだろうと思います。個人的には練りこまれた世界観や、人型戦闘兵器の存在がとても好きなので続巻も買うつもりです。