楓の剣!

楓の剣! かたやま和華

楓の剣! (富士見ミステリー文庫)

楓の剣! (富士見ミステリー文庫)

榊原の小天狗姫様」と周りの人々から呼ばれる名物じゃじゃ馬姫こと榊原楓。彼女が三年ぶりに江戸に帰ってきた。江戸での日々を懐かしさをもって過ごす楓。そんなある日狼藉物から護ったことを縁に、陰陽師―速水宗一郎から「髭切」なる妖刀をもらうことになった。楓は速水の菩薩のような人柄にすっかりほれ込んでしまう。一方、江戸の町では「わらべ唄火事」と呼ばれる奇妙な火事が起こっていた。それを知った楓は幼馴染の弥比古、嘉一(カイチ)と共に事件の真相を探ることに・・・。
 はい、そういうわけで江戸を舞台にした謎解き物語です。これは面白いですね〜。なんといってもキャラクター達が魅力的でした。男装の武芸者でじゃじゃ馬娘な楓。そんな楓と腐れ縁の弥比古。この二人の掛け合いが凄く楽しいです。お互い素直じゃなくて文句ばっかりだけど、なんだかんだで息が合っている。そんな感じかと。また、弥比古が案外正直というか、率直というか、そういう感じがあって、それが良かったです。 
 この二人以外にも出てくる登場人物たちそれぞれが、なかなか好印象。個人的には嘉一と羽瑠(ハル)が良かった。特に羽瑠は終盤見せた楓とのやり取りが印象的でした。
 ストーリーは「わらべ唄火事」を中心に江戸を騒がせている、謎の出火事件を楓たちが追っていきます。陰陽師とかの設定が出てくるあたりからも分かるかもしれませんが、完全なリアルだけな世界ではないです。ストーリは個人的には好きですね〜。話しの展開は結構読めそうですが、普通に楽しめました。ただ、少し贅沢を言えば、もっと楓の「小天狗姫様」らしさを見せてほしかったかと。いまひとつお転婆ぶりが弱かったように思いました。 
 マトメ。魅力的なキャラクター達の掛け合いが楽しい作品かと。ストーリ自体も楓がその内面に抱えているものや、弥比古の楓に対する態度、終盤のどこかやるせない雰囲気など、見所がいっぱいあるかと。
 印象的な台詞(以下反転)―「私には、楓がいたのにね」―秋葉の台詞。読んだ瞬間、なにかしらの意味があるんだろうとは思っていたけど、そういうことだったとは。ある程度は予想をしていたとはいえ、結構胸に込み上げてくるものがありました。