カッティング(2)

カッティング 〜Case of Tomoe〜 翅田大介

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫)

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫)

☆☆☆☆☆☆
 幼い頃に父親から捨てられた紅条ケイイチロウは、自分には何の価値もないと思い続けていた。そんな、ある時ケイイチロウのクラスに転校生がやってきた。紅条トモエと名乗るその少女は、なんとケイイチロウの妹だという。たしかに、その少女の瞳はケイイチロウと同じ淡黄色の虹彩をしていた。ケイイチロウは聞いたことも会ったこともない妹の登場に困惑する。そして――。
 どこか病んだ部分をもっている少年少女たちの物語『カッティング』の2冊目です。これはなかなか面白かったですね。2冊目といっても基本的には別物に近い感じです。
 なんといっても主人公のケイイチロウとトモエの2人が良かったですね。過去の影響からほとんど関心というものを持たないケイイチロウが、彼を憎んでいるトモエに出会うことで、彼女に興味を覚える。2人の交流はどこか歪んだものなのだけど、物語が進むにつれてこの2人の関係に変化が起きていくのが良かったですね。 
 話的にけっこう暗い部分を持っていて、ともすれば鬱々とした印象を受けそうな感じですが、実際はそうでもないですね。主人公であるケイイチロウの一人称に加え全体的に淡々としていることが、結構キツイ内容でも気分の悪くなるような重苦しさを感じさせない要因かと。なので、個人的にはどこか淡白な この雰囲気がけっこう好きだったりします。
 まとめ。少年少女たちの心の動きが丁寧に描かれていた作品。終わり方も良かったです。今後の展開に期待です。