神様が用意してくれた場所

神様が用意してくれた場所 矢崎存美

神様が用意してくれた場所 (GA文庫)

神様が用意してくれた場所 (GA文庫)

☆☆☆☆☆☆
 池沢香絵はこの春高校を卒業した19歳。雑用担当のバイトとして日比野探偵事務所で働いている。この仕事を始めて2ヶ月、ようやく慣れてきた香絵。そんなある日、事務所に舞い込ん依頼は変わっていた。その依頼とは「あるはずのない道に消えた夫を探して欲しい」というもので・・・・。幼いころから<不思議>なことを体験してきた少女が巡る不思議な物語。
 これはなかなか面白かったです。最初、同じくGA文庫で出ている「お隣の魔法使い」っぽいお話なのかなとおもっていたのですが、実際は違っていた様子。「お隣の魔法使い」のように不思議な体験にほのぼのとするというものではなく、その体験を通して誰かに影響が与えられるという点に重点が置かれているかと。また、香絵の一人称で綴られているので、彼女の心情が伝わってきます。
 個人的により面白いと感じたのは第4話「湖の秘密」。お話そのものも良かったのですが、なんといっても犬のグミが良かったです。
 まとめ。短編仕立てで紡がれるストーリ(ただし、実は繋がっている部分もある)。全体的に淡々とした雰囲気が印象的です。話に救いがあるものもあれば、そうでもないものもあったりと、なんというか色々な意味で「不思議」な作品でした。それと、イラストとの相性も良いように感じました。温かみのあるイラストが素敵です。
 印象に残った台詞(以下反転)――「グミには、グミをあげなさい」――香絵の母の台詞。なんていうか完全に油断していたところに直撃(笑)。思わず吹いてしまいました。