ゼロ・イクステンド

ゼロ・イクステンド 赤井紅介 スーパーダッシュ文庫 2007年2月28日

ゼロ・イクステンド (集英社スーパーダッシュ文庫)

ゼロ・イクステンド (集英社スーパーダッシュ文庫)

☆☆☆☆☆☆
 突然あらわれた少女に襲われた圭一郎は、その少女――ラウラから信じがたい話を聞かされる。それは、人知れず超能力者(イクステンド)同士の戦争が起きており、その標的として圭一郎が狙われているという内容だった。信じられない。しかし、現実に超能力を使うラウラが目の前にいて・・・。混乱する圭一郎に対し、ラウラはボディガードを持ちかける。そして――。
 実は、宮城氏のイラストに惹かれて購入した本だったりします。まあ、きっかけはどうあれこの作品を読んだわけですが、これはなかなか面白かったですね。超能力バトルモノです。
 まず、世界観が面白かったですね。2つの良く似た世界があって、1年後2つの世界は壊滅の危機を迎えようとしていた。生き残れるのはどちらか1つの世界のみ。こういう状況のなか真実を知った圭一郎がとる道は・・・?といった内容。まあ、ここまで来ると圭一郎がとる道はきまったようなものだったのかもしれませんが・・・。それでも(以下反転――両方の世界を助ける方法ではなく、不利に立たされている自分の世界を助けるために行動する主人公をちょっと期待していたりも・・・)。
 メインの登場人物たちがなかなか良かったですね。圭一郎、和彦、亜由美、そしてラウラ。彼らのほのぼのとした日常のやりとりにとても好感が持てます。そして、だからこそ、中盤で真実を知ってしまった圭一郎の気持ちが痛いくらい伝わってきます。読んでいて湧き上がってくるものが。
 それはそれとして。個人的には亜由美が好きですね。本音がどこだか分からない態度や言動の多い彼女が、時折見せるどこか嬉しそう(楽しそう)な雰囲気がとても素敵です。
 まとめ。ストーリー展開そのものは王道といえるものですが、キャラクターの心情に焦点が当たっているためその部分で惹かれていきました。続きもありそうな展開なので、次にも期待です。
 印象に残った台詞(以下反転)――「てめ、圭一郎ォ! そこ、俺にも舐めさせろ!」――和彦の台詞。たれがついていたと言って、突然圭一郎の頬を舐めた亜由美。その行動を見た和彦の台詞です。なんていうか、吹いた。こういう発想大好きです(笑)。