黄昏色の詠使い

黄昏色の詠使い イブは夜明けに微笑んで 細音啓 富士見ファンタジア文庫 2007年1月25日

☆☆☆☆☆
 それは昔、少年と少女が交わした約束――。名詠式を習うための学校に通うクルーエルのクラスに一人の転校生がやってきた。5つの系統のどれにもあてはまらない夜色名詠なるものを学ぶその転校生――ネイトに興味をもったクルーエルはなにかとネイトの世話を焼いていく。一方、虹色名詠士として有名なカインツもまた、夜色名詠の使い手を捜していて――。
 第18回富士見ファンタジア長編小説大賞<佳作>受賞作です。名詠式を学ぶ少年少女達の物語。これはまずまずの面白さって感じでしょうか、雰囲気が良かったですね。
 名詠式の設定が面白いですね。赤・青・黄・緑・白を基本として、それぞれ同じ色の触媒(カタリスト)を使い何かを招きよせる術とのこと。いわいる召喚術みたいなものですかね。また本編中にはこの5色に属さない夜色なるものが出てきて、これがまたいい感じでした。
 ストーリーはネイトやクルーエルの成長物語といったところでしょうか。失敗したり、不安になったり迷ったりしながらも頑張る姿が印象的です。また、プロローグの「約束」も絡んできて話に深み出ていたかと。過去を想起させる終盤のクルーエルの贈り物がともて良かった。
 まとめ。所々すこし強引かな、というところはありましたが、素敵な雰囲気で最後まで楽しめました。続きがあるのなら、詠んでみたいですね。