お隣の魔法使い

お隣の魔法使い　篠崎砂美

お隣の魔法使い 始まりは一つの呪文 (GA文庫)

☆☆☆☆☆☆☆☆
　メアリー・フィールズ。彼女はごく普通の家に住む、ごく普通の女の子だ。ある日彼女が家に帰ってみると、空き家だったお隣に、真新しい家が建っていた。家の主はトゥックトゥイックさん、長ったらしいのでツクツクさんだ。ところで、このツクツクさん。一晩で模様替えする庭や、旅好きのぬいぐるみ、姿が見えないメイドさんと、彼の周りにはいつも不思議が一杯。これは、そんなツクツクさんとメアリーが送る、ちょっぴり不思議でやさしい物語。
　これはとても面白かったですね。メアリーがそのお隣さんと過ごす、ほんのちょっぴり不思議な日常。とても穏やかでやさしく包み込まれるような暖かさを持っていて、それが、どうしようもないくらいに心地よい。そんな作品です。
　また、メアリーの一人称で語られるというのも良かった。メアリーが感じたこと、体験したことが素直に伝わってきました。あと、要所要所に挿入されている挿絵が、作品のもっている雰囲気とすごく合っていて良かったです。個人的には序盤の写真のイラストと、不思議な穴のお話の時のイラストが好きですね。
　まとめ。好奇心旺盛なメアリーや、そんなメアリーに時に振り回されながらも、どこか楽しげに過ごすツクツクさんなど、登場人物達が魅力的でした。そんな彼らが織りなす物語は、ありふれた日常で、それでいて少しだけ不思議で、とてもやさしい。気がつけば、彼らの世界に浸っている自分がいました。とても面白かったです。