陰月のヤジリ

陰月のヤジリ 時海結以

陰月のヤジリ (HJ文庫)

陰月のヤジリ (HJ文庫)

☆☆☆☆☆☆
 崩れ落ち廃墟と化した村。その村に住む唯一の人間はサノカタとユツキの兄弟だけだった。ある日、その村に二人の旅人が現れる。二人の名はサナとタジヒといった。少女サナの掌にはサノカタと同じ刺青が刻まれていた。これは古より伝えられた伝承により儀式を執り行なう者が負う刺青。サナは儀式の贄としてサノカタに殺されにやってきたのだった。
 滅びを迎えつつある村を舞台に繰り広げられる古代神話ロマンとのことです。で、感想。なかなか面白かったですね。登場人物が4人だけで、その4人でストーリーが展開していきます。 各々が思惑を抱えている中、ひたすらに真っすぐな性格のユツキが生んだ小さな波紋。その波紋が大きなうねりになって物語が展開していくのが良かったですね。
 4人の中で特にメインなのがユツキとサナ。最初は頑なだったサナが、ユツキと交流し打ち解けていくのが良かった。純真無垢なユツキの行動がなんともくすぐったい感じです。
 一方でサノカタやタジヒについても、裏で蠢く色々な感情を想像できたかと。どこまでも真っすぐなユツキとの対比もあってか、彼等の不器用さが伝わってくるようです。
 まとめ。色々な感情を抱えていく登場人物達が印象的だった作品。好みが分かれそうですが、個人的にはなかなか楽しめました。