海をみあげて

海をみあげて 日比生典成

海をみあげて (電撃文庫)

海をみあげて (電撃文庫)

☆☆☆☆☆☆
 その空には鯨が飛んでいる――。中学3年生の真琴は、そのお節介でまっすぐな性格から色々なことに首を突っ込みます。クラスメイトの洋助を巻き込んで、真琴は今日も町中を走ります。
 空に鯨が飛んでいる不思議な町を舞台に紡がれる少女と少年の物語『海をみあげて』です。
 これはなかなか面白かったですね。どこまでも前向きでまっすぐな真琴と、とことん素直じゃない洋助の2人が良かったです。
 全体的にまったりとした雰囲気の中で2人のやり取りが楽しいですね。なかでも時折分かりにくい優しさを見せる洋助が印象的でした。また、一見無愛想でなんでも出来てしまうような洋助にも、実はちょっとした弱点があったりするのですが、その時の掛け合いがとくに面白かった。
 まとめ。どこまでも穏やかで、派手な部分はないのだけど、心温まるような雰囲気が素敵な物語。続きも考えられているようなので、期待です。
 印象に残った台詞(以下反転)――「なんだ、真琴、その・・・・・じゃあ、お父さんと行くか?」――真琴のお父さんの台詞。夏祭りに一緒に行く相手がいないと言った真琴に対してのお父さんの台詞です。なんというか、このお父さん素敵だなーと感じた台詞でした。