スプライトシュピーゲルⅢ

スプライトシュピーゲルⅢ いかづちの日と自由の朝 冲方丁 富士見ファンタジア文庫 2007年11月5日

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 近未来都市ウィーンにて、治安を司る部隊MSSに所属する3人の少女たち。国連ビル内での要人暗殺を発端としたテロに立ち向かう3人。しかし――。
 「スプライトシュピーゲル」3冊目。とても面白かったですね。後手後手の状況で色々と追い詰められていくMSS。どうやってこの事態を乗り越えていくのかと気になって、最後まで一気に読めました。
 どの人物も魅力的なのですが、その中でもとりわけ鳳(アゲハ)、冬真、水無月の3人が印象的でした。鳳(アゲハ)と冬真の2人については、その心情にスポットがあたっていてそれが良かったですね。
 一方の水無月ですが、今回の件で印象がガラリと変わりましたね。普段の軽いノリの裏に、色々と重たいものを背負っている様子。最後の場面がすごく切ないです。
 まとめ。先が気になる展開で、最後までとても楽しめた作品。また、ちょっとした台詞の節々に魅力が感じられる、そんな作品でもあったかと。何気に巻末のおまけ小劇場が楽しかったですね。ギャップがあるようでないような感じが素敵です(笑)。次巻はまた「オイレン」とのリンクがあるようなので、続きがとても楽しみです。
 印象に残った台詞(以下反転)――「くんづけなど水くさいと言ったはずだぞ。全くその通りだ水無月! といった具合に呼びたまえ。(後略)」――水無月の台詞。なんだか独特のテンションで突き抜けているあたりが素敵です。いくつか似たような台詞があって、そのタイミングとテンポのよさが水無月を魅力的に見せている要因のひとつなのかなと思ってみたり。