戦塵外史四

戦塵外史四 豪兵伝 花田一三六 GA文庫2007年11月30日

戦塵外史四 豪兵伝 戦塵外史 (GA文庫 は 2-4)

戦塵外史四 豪兵伝 戦塵外史 (GA文庫 は 2-4)

☆☆☆☆☆☆
 戦塵外史短編集――。
 と、いうわけで今回は2巻同様の短編集です。なかなか面白かったですね。8編の短編からなる作品で、それぞれ立場の違う人々の物語が展開します。
 以下、それぞれ簡単な紹介&感想を。
 「人斬り」・・・とある人斬りと、それを追いかける警吏の物語。警吏の男が人斬りを追いかけているうちに、人斬りにどこか共感めいた気持ちを抱いていく、そんな姿が印象的です。
 「豪兵伝」・・・一兵卒として腕を振るう樵の男の物語。凄まじい戦いぶりを見せる男だが、じつはその男が思っているのはたった一つのことだったというお話です。
 「女人像忌憚」・・・とある像にのめり込んでいく男の話。なかなかホラーテイストな感じでした。女人像に異常ともいえる執着を見せる男。その背景には男の過去の出来事が少なからず関係しているようです。
 「工房小話」・・・<よく斬れる>剣とは何か、というテーマを職人達の視点から描いた作品。凄腕の鍛冶師でありながら、過去の出来事から剣を嫌う青年の姿が印象的です。
 「最後の仕事」・・・60歳にしてとある地の領主に任命された男の物語。やせ衰えた土地で、どうにか作物を作ろうと奮闘する姿が良かったですね。自分の信念を最後までまげずに貫いた姿勢に感嘆です。
 「導く女」・・・後に「不敗の王」と呼ばれる男の若かりし頃のお話。男の、なんとも不器用な発言に、お付の騎士じゃないけど笑いが込み上げてきます。
 「轍の記」・・・とある戦を荷駄隊の人夫の視点で描いた作品。戦を経験した人夫の語りが大半をしめるという一風変わった作品だったかと。
 「農夫の剣」・・・傭兵を辞めて農夫になった「先生」に呼ばれてやってきた傭兵の物語。個人的には一番好きなお話でした。傭兵である少年がどういう決断をするのかと、ドキドキしながら読めました。
 まとめ。短編ということもあり、欲をいえばもう少し突っ込んだ部分も欲しいという気持ちもありますが、全体的に楽しめました。次巻は、まったくの新作とのことなので、読むのがとても楽しみです。