黄昏色の詠使いⅤ

黄昏色の詠使いⅤ 全ての歌を夢見る子供たち 細音啓 富士見ファンタジア文庫 2008年2月25日

☆☆☆☆☆☆
 意識を失い段々と弱っていくクルーエル。そんな彼女を、治療のためにケルベルク研究所へと移送することが決まった。そして残されたネイトは・・・・・・・。一方、ケルベルク研究所に灰色名詠の使い手ミシュダルの手が伸びる――。
 『黄昏色の詠使い』その5冊目です。今回もなかなか面白かったです。
 今回良かったのはネイトですね。いまだ意識不明のクルーエル。そんな彼女を目の前にして何も力になれない。でも、それでも、信じることだけはやめなかった、そんな姿が印象的でした。
 また、全体のストーリーも良かったですね。特に後半、ケルベルク研究所を舞台にした戦いが面白く、一気に読めました。なかなか素敵です。ただ、ちょっと贅沢を言えばもう少し敵方であるミシュダルのことを掘り下げてほしかったというのもあったり。とはいえ、十分楽しかったことには変わりないのですが。
 今回でひとつのエピソードが終わったとのこと。まだまだ謎が残っているので、今後も楽しみです。
 印象に残った台詞(以下反転・割とネタバレかも)――「『おやすみ』のキスはいいや。『おはようございます』って、眠ってるお姫様にキスして起こしてくれるの。わたしね、子供の頃そんな絵本読んですごいドキドキしたことがあったの。それ、お願いしちゃだめかな」――ネイトへ向かってのクルーエルの台詞です。いや、なんとも素敵ですね(笑)。楽しそうに言うクルーエルの姿が目に浮かぶようです。