テイルズオブデスティニー2 蒼黒の追憶(とき)上

テイルズオブデスティニー2 蒼黒の追憶(とき)上 矢島さら ファミ通文庫 2003年4月1日

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 仮面に素顔を隠し、カイルたちの窮地を何度も救った男・ジューダス。彼の正体は18年前、後の英雄スタンたちと共に戦ったリオン・マグナスであった。自らの信念に従い、かつて、友であるスタンたちと剣を交えその命を散らしたリオン。そして18年後、スタンとルーティの息子カイルと共にリオンはいた。ジューダスという男を描く、3部作第一弾。
 ゲーム「テイルズオブデスティニー2」でカイルと共に旅をするジューダスをメインに据えた外伝の1冊目です。個人的にジューダス(リオン)は好きなキャラクターなので、彼がメインのお話というのはすごく嬉しいです。もっとも(あとがきによると)ジューダスが主役といっても、彼が物語りをひっぱていくのではなく、周りの登場人物達が彼を語っていくとい感じです。
 短編4つからなる構成で、それぞれ時代や登場人物が違います。以下それぞれ簡単な感想を。
 第一章「ピエール・ド・シャルティエ」・・・リオンがシャルティエと出会う時のお話。「デスティニー」以前の話で、ある意味すべの始まりであるといえるかと。
 第二章「カイル・デュナミス」・・・リーネ村を訪れた時のお話。ジューダスに対して疑いをもっているロニと、ジューダスを仲間として疑っていないカイルの会話がメイン。ゲーム的にまだ序盤だから、まだまだ成長前のカイルが印象的というかなんというか。ロニ大変だな、とか思ったりしました。
 第三章「ルーティ・カトレット」・・・前作「デスティニー」から1年後が舞台のお話。個人的にはフィリアとチェルシーの会話とルーティとマリーの会話がそれぞれ印象的でした。特にチェルシー。自分が抱いている負の感情。だけどそんな自分は嫌で・・・。そんな彼女の苦悩のようなものが伝わってきました。
 第四章「ナナリー・フレッチ」・・・エルレインによって10年後へ飛ばされたカイルたち。一緒に飛ばされたジューダスとロニ。飛ばされた場所で出会ったナナリーとのお話。最後のナナリーとジューダスの会話がとても印象に残りました。
 まとめ。それぞれ違った形でジューダスが関わっているという感じのお話だったかと。残り2冊あるとのことなので、続きも楽しみです。
 印象に残った台詞(以下反転)――「必要なときにいつでも本当の自分を取り戻せる、ということ」「それができないのなら・・・・・・犯してしまった取り返しようのない過ちや、数え切れないほどの後悔は、人生においてなんの役にもたたないことになる」――ナナリーに向ってのジューダスの台詞です。なんか妙に納得してしまった。この言葉を本質的に理解することは自分にはできそうにないのですが、どんな後悔も悔恨も、それを受ける自分が本物でなければ意味を成さない、そんな解釈をしています。