鉄球姫エミリー

鉄球姫エミリー 八薙玉造 スーパーダッシュ文庫 2007年9月30日

鉄球姫エミリー (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

鉄球姫エミリー (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

☆☆☆☆☆☆
 王女でありながら、その身に鎧を纏い鉄球を振り回す少女・エミリー。本来なら王位を継承するはずだった彼女だが、弟が生まれたことでそれは無効となった。弟王との争いを避けるため、少人数で辺境へと移ったエミリー。護衛騎士のマティアスやアルバート、装甲侍女ジュディたちを苛めながら、それなりに平和な日々を過ごしていた。
 ところが、そんな彼女たちのもとに弟王派の者たちからの刺客が送られてきた。そして――。
 第6回スーパーダッシュ小説新人大賞受賞作品「鉄球姫エミリー」です。
 これはなかなか面白かったですね。まず、面白いと感じたのが鎧の設定。輝鉄という鉱石を利用して作られた鎧は、通常の3倍の装甲を誇り身体能力を爆発的に高めるという設定が良かった。また、その鎧の中でも種類の分類があったのも面白いです。
 次にキャラクターたちも良かったですね。下ネタを連発してはお付のものたちを困らせているエミリーをはじめ、どこかお茶目なマティアスや真面目な騎士といった感じのアルバートなど、それぞれが魅力的です。そして、そんな彼らの掛け合いは、読んでいてすごく楽しいです。個人的にはエミリーとマティアスの掛け合いが好きだったりします。
 ストーリーは(意外と)重たい方向へ進んでいきます。特二中盤から後半はなかなか凄惨なお話かと。そんな中一番印象的だったのは主人公であるエミリー。途中でとあることで彼女がショックを受ける(以下反転――というよりは、自身の判断に絶望と後悔をする)場面があるのですが、それまでの彼女が激情の内側に抱えている苛立ちが(読み手側に)分かることもあり なんともいえない気持ちにさせられます。
 まとめ。特殊な鎧をきた重騎士たちの戦いを描いた作品。分量もあり、なかなか読み応えのある作品でした。そういえば、あんまり関係ないけど、読んだあとにカラーイラストの最後を見ると、ちょっと和むというかほっとします。