とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶 犬村小六 ガガガ文庫 2008年2月24日

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

☆☆☆☆☆☆☆
 レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルに下された指令。それは次期皇妃を連れての敵中突破だった。1万2千キロを単機で駆ける。それは耳を疑うほど前代未聞の作戦だった。こうして、次期皇妃ファナと傭兵飛空士シャルルの海上翔破の旅が始まる――。
 『レヴィアタンの恋人』の作者である犬村小六先生の新作『とある飛空士への追憶』です。早速感想。これはとても面白かったですね。なんとも切なくて、それでいて暖かい作品でした。
 なんといっても素晴らしかったのは、主役のシャルルとファナの2人ですね。かたや、その生まれのせいで不遇な日々を送っていたシャルル。かたや、自分の意思を封じられ心を閉ざしてしまったファナ。この2人の交流がとても良かった。
 特に、最初は人形のようだったファナが、シャルルと段々打ち解けていく様子は読んでいてとても暖かい気持ちになります。
 そして、だからこそ、2人の身分や立場の違いを考えると、どういう結末を迎えるのかと気になって仕方なかったです。フライングしたくなる気持ちを抑えるのが大変でした(笑)。
 また、緊張感のある空戦も良かったですね。圧倒的な敵の中を、たった一機。手に汗握る展開がとても印象的でした。
 まとめ。続きが気になって、どんどん読む手が進んでいく、そんな作品。暖かい気持ちになれる終わり方も素敵でした。読んでよかったです。