紅牙のルビーウルフ3

紅牙のルビーウルフ3 西の春嵐 淡路帆希

☆☆☆☆☆☆
 神国グラディウスに必要なのはルビーウルフの血筋だけ。皆、口にだしては言わないが、誰もが世継ぎの誕生を望んでいた。それをルビーウルフは匂いで感じていた。そんな中ジェイドだけは違った。彼だけがルビーウルフを理解してくれる。彼女の意思を尊重してくれる。国の建て直しをかけた工事の視察に訪れたルビーウルフとジェイド、見習い騎士で双子のリオンとティグルの4人と狼2匹。領主ハリスや、ハリスの娘クラリッサと出会い親交を深めていく。ところが・・・ある日ジェイドとクラリッサが行方知れずとなった。ジェイドがいなくなった。その事実にルビーウルフは動揺し――。
 紅牙のルビーウルフ3巻です。今回も面白かったです。ただちょっと気になった点もあります。今回はルビーウルフとジェイドの間に、ジェイドを慕うクラリッサが登場。ジェイドとクラリッサの二人が同時にいなくなったという事実に動揺するルビーウルフって構造なのですが、どうにもクラリッサに魅力を感じれなかった。恋(?)のライバル登場に揺れるルビーウルフっていう感じのものを描こうとなさっていると思われるのですが、その目的だけが先行してキャラクターの魅力がついていっていない印象がありました。言葉が悪くて申し訳ないのですが、クラリッサが噛ませ犬に見えてしまった。もう少し違った魅せ方があったんじゃないかな〜と思ったりしています。
 とまあ、さも偉そうにいっていますが、年頃の少女の顔を覗かせるルビーウルフ(本人は気きづいてないっぽいけど)はやっぱり可愛かったし、新キャラの双子のみならい騎士達も好きですね。あと、中盤のルビーウルフを介さないジェイドとフロストのやり取りが好きだったり。狼2匹が魅力的なのもこの作品の特徴ですね。
 そんなわけで少し気になるところもありましたが、全体的に楽しめた作品。今回の件でルビーウルフに王女としての自覚が再認識された様子。個人的には今後はグラディウスの政治を司る人達の登場を望んだりしています。まあ、それはいいとして、次はどんなお話になるのか、とても楽しみです。
 印象に残った会話(以下反転)――「あたしの勘は間違ってなかったみたいだね。やっぱりこれって帰主本能ってやつなのかな」「あら、じゃあジェイドはルビーの主人ということになるわね」――ルビーウルフと狼ケーナの会話。なんというかケーナって凄いなと思った(笑)。ルビーウルフのよき姉って感じですね。