戦塵外史二

戦塵外史二 八の弓、死鳥の矢 花田一三六 GA文庫 2007年2月28日

戦塵外史 二 八の弓、死鳥の矢 (GA文庫)

戦塵外史 二 八の弓、死鳥の矢 (GA文庫)

☆☆☆☆☆☆☆
 まるで歴史小説を読んでいるような読感が特徴的な「戦塵外史」、その2冊目です。早速感想。とても面白かったです。今回は短編集とのことですが、どの話も魅力的で物語に引き込まれます。以下それぞれ簡単に感想を。
 「八の弓、死鳥の矢」・・・八人がかりで弦を張った強弓を扱う暗殺者の物語。最後の標的を「皇帝」と定め城へと忍び込んだが――。短いですが面白かったですね。何気に後の短編に出てくる人物もいます。
 「ルクソール退却戦」・・・前巻で登場したダリウスの物語。あいかわらずダリウスが魅力的ですね。ダリウス以外ではキルスが好きですね。ちなみにダリウスとあの人の出会いの話でもあります。
 「架橋」・・・今までに96度も戦を経験した老傭兵の最後の戦いを描いた物語。いや、渋い。なんとも渋いです。今回の中で一番好きな話かも。個人的にはあの人(以下一応反転――1話の皇帝)との一瞬の交差が印象的でした。
 「いちばん長い夜」・・・ひとりの伝令兵の物語。とある事態から主から命を狙われることになった伝令兵のイスワーン。主人の裏切りに対し 彼がどういう行動をとるのか、ドキドキしながら読めました。
 「ジュラルスタンの策士」・・・人々から冷血漢と言われている策士の物語。天才的な策士である彼が、けれども本当に頭を悩ましていたのがアレだったというのはちょっと笑えます。楽しい。
 「策士の弟子」・・・新作の書き下ろし。題名通り上の策士の弟子の物語。これも面白かったですね。何気に不器用なフーシェの態度が印象的でした。
 まとめ。とても面白かったです。復刊は次巻で終わりとのことですが、そのさらに次がでることを期待したいですね。
 印象に残った台詞、ではないですが(以下反転)――「悪夢だ。フーシェが二人になる」――天才的な策士フーシェが後継者を育てたいと申し出たときの周囲の反応(正確には少し違うのですが)。なんというか吹いた(笑)。周りの悲嘆ぶりが目に浮かぶようです。