鳥は鳥であるために

鳥は鳥であるために 野島けんじ MF文庫J 2004年10月31日

鳥は鳥であるために (MF文庫J)

鳥は鳥であるために (MF文庫J)

☆☆☆☆☆☆
 「呪受者(のろわれもの)」として社会から忌嫌われる存在がいる。高校生の小笹志朗はその「呪受者」の一人だった。彼の「呪」は水色のカバのむぅちぃ。むぅちぃは他の「呪」を食べて消すことができる。ある日、そんな彼の能力を知った水星家が志郎を拉致し、水星邸へと連れて行った。自分の正体をばらすと脅された志朗は、水星家の娘の「呪」をむぅちぃに食べさせる。そして半ば追い出されるようにして水星家を出た志朗を待っていたのは――。
 なんとなくタイトルに惹かれて購入した作品です。「呪受者」として生きる志朗と、彼が出会った同じく「呪受者」の水星小鳩の物語です。
 で、感想。これはなかなか面白かったですね。割と地味な感じではあるのだけど、個人的には結構好きなタイプの作品でした。基本的なストーリーは志朗(とその妹である菓(このみ))と小鳩の交流。複数の「呪」を持っていて、感情のほとんどを表に出さない少女・小鳩が、志朗たちとの出会いを経て少しずつ変わっていくといった感じのお話かと。あとは、小鳩の兄を探すお話でもあります。
 やっぱり、なんといっても志朗たちの交流が良かったですね。とくに菓。兄である志朗が「呪受者」ということもあり、「呪受者」に対して偏見を持っていない。そんな彼女の小鳩に対する接し方が良かったです。普段はアグレッシブで割と強引なのだけど、一方でしっかりと相手の感情の機微を見ている。そんな感じが印象的でした。
 それとは反対に影が薄かったのは主人公の志朗。彼自身が「呪受者」だから、あまり他人に関わることがなかったというのもあるのだろうけど、基本的に受身なんですよね。小鳩との交流だって菓がメインだったような感じだし。う〜ん、実は菓が主人公ですとか言われても納得しそうだ(苦笑)。まあ、志朗の活躍(?)にはこれから期待します。あ、あとむぅちぃにもっと出番をー(笑)。
 まとめ。ストーリーが基本的に一直線なので、分かりやすく読みやすいですね。全部で4冊とのことなので、次も楽しみです。