断章のグリムⅠ

断章のグリムⅠ 〜灰かぶり〜 甲田学人 電撃文庫 2006年4月25日

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 この世界に存在する怪現象は、全て<神の悪夢>欠片である。この悪夢の泡は人間の意識に浮かび上がると、人の恐怖や悪意と混ざりあう。そして浮かび上がった<神の悪夢>は現実世界を変質させていく――。
 「Missing」で有名な甲田学人先生の新作です。ちなみに私は、「Missinng」現在4巻で置いてかれていたりします(苦笑)。
 それはそうと感想。これは面白いですね。題名の通りグリム童話をモチーフに、この巻では特に灰かぶり=シンデレラをメインに展開していきます。私はグリムの方のシンデレラを知らなかったのですが、途中で解説が入るので問題はなかったかと。
 悪夢から人を守れるのは、同じようにかつて悪夢を体験した人だけ。そして、凄惨な悪夢を経験した人間に残る後遺症としての能力などの設定が序盤で説明されるので、それ以降混乱なく進めたかと。設定自体も、細かく分かれてはいるけど、雰囲気としては掴みやすいものだと思います。 
 まとめ。魅力的な登場人物や、凄惨な描写でジワジワとくるものがある作品。ちなみに、あとかぎによるとメルヘンとのことです。メルヘンかどうかはともかくとして、「Missing」に比べてファンタジー色が強くなったように感じました。うまく説明はできないのですが、前作が「恐怖」だとするならば、今作は「やわらかい恐怖」とでもいうのでしょうか。同じ恐怖ではあるのですが、どこか神秘的。そんな雰囲気を感じていたりします。