七姫物語

七姫物語 高野和 電撃文庫 2003年2月25日

七姫物語 (電撃文庫)

七姫物語 (電撃文庫)

 とある大陸の端っこ。そこでは王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家の統一を図ろうとする七つの都市があった。そんな姫君の一人に七宮カセンに選ばれた少女がいた。少女の名前はカラスミカラスミは自分を担ぎ上げた武人テン・フオウとその軍師トエル・タウと共に七宮城で姫として暮らしていた。とんでもない大嘘つきの二人だったが、彼らと共に過ごす日々は幸せだった。しかしカラスミが12歳になったある時、隣接都市ツヅミがカセンへと侵攻を始めて・・・。
 孤児だった少女が二人の男に拾われて、都市の象徴である姫として成長していくお話です。これは面白いですね〜。感想を一口で言うと地味な良作といった感じかと(けして悪い意味ではありません)。
 登場キャラクター達が少ない分、それぞれが魅力的で、彼らのやり取りが独特でどこか穏やかな雰囲気をかもし出しているかと。個人的には不器用なヒカゲが好きですね〜。
 ストーリーは主人公カラスミの一人称形式で進んでいきます。で、この一人称がとても良かった。彼女の抱く素朴な感情が読み手にダイレクトに伝わってきて、読んでいて心地よかったです。
 反面、カラスミが関与していない事態については、人づてに聞いているといった感じ。なので、その辺があまり説明されていない印象も受けます。あくまでカラスミの視線というものに重点が置かれている様子。
 まとめ。全体的に素朴。派手な立ち回りやここぞという見所はないのですが、カラスミの視線で紡がれる彼女の感情や、仲間達に対する思いが印象的な作品でした。
 現在(06年3月)3巻まで出ているので続きを読むのが楽しみです。
 印象に残った台詞(以下反転)―「二年間、一緒だった」―ヒカゲの台詞。二年もの間、影でカラスミを見守っていたヒカゲ。彼がこの二年間でどのような感情を抱いたのか、とても気になります。いつか、その感情を表にだしてくれないかな〜とか期待してみたり。