土くれのティターニア2

土くれのティターニア2 増子二郎 電撃文庫 2007年3月25日

☆☆☆☆☆☆
 かつて<山のカミ>に半身を喰われ、その代わりに命を救われ力を得た少女・明日香。強力な精霊に憑かれている少年・良文。二人は人知れず、人々に災いをもたらす存在<マガツモノ>と戦う日々を過ごしていた。そして――。
 土くれのティターニア、その2冊目です。今回も普通に面白かったですね。どこか落ち着いた雰囲気が素敵です。以下、それぞれの話別に簡単な感想を。
 第6話「水は誘う」・・・人を襲う危険のある水妖を退治するお話。これはちょっと笑った。ちょっとした油断から、明日香にとって大変なとある事態へと陥って・・・。 途中の明日香と良文の掛け合いが面白かったですね。良文につめよる(?)明日香が可愛いです(笑)。
 第7話「真心は鞄に込めて」・・・野良犬を名乗る少女が明日香たちを訪ねてきて・・・。鞄の中に封じられた毛皮を守るお話です。なかなか切ないですね。明日香たちとクロの交流がよかった。明日香がクロになにかと世話を焼くのを見ていた良文の心情がちょっと面白いかも。
 第8話「夜の鳥」・・・ある夜明日香から連絡を受けた良文が見たものは。赤ん坊を抱いた明日香だった。 赤ん坊が産女の見せる幻であることをわかっていながら、それでも赤ん坊を手にかけることができない。それは弱さなのかどうか、なかなか興味深い話でした。
 第9話「糸を断つとき」・・・良文の友人で明日香も一目おく存在、新井がメインの物語。といっても新井よりも英田さんの方が印象的でしたが。
 第10話「魔女の行く先」・・・明日香が<恐怖の暴君>と呼ばれるキッカケになった人物、水野さんがメインなお話。学校に来なくなった水野さんがその間どうしていたかが分かります。1巻時の彼女のことはあんまり覚えていないのですが、なかなか好人物になっていたかと。
かつて自分たちがやっていたことの真実。その真実を知るためにはらった代償は大きい。そしてまた、かつてと同じ過ちを繰り返そうとしている友人たち。すでに友人達と違った視点に立ってしまった水野さんにとって、同じ過ちを犯そうしている友人たちを見るのはとてもつらいことなんだろうなと感じました。それはそれとして。明日香と水野さんの掛け合いが楽しい楽しい。なんだかんだで息があっている2人。今後も2人で登場する話を読んでみたいですね。
 まとめ。凄い派手というわけではないのですが、染み入るような面白さがとても素敵な作品。続きにも期待したいです。